読書記録:パラダイス・ロスト Paradise Lost/柳広司

書名:パラダイス・ロスト Paradise Lost
著者:柳広司
読了日:2014/5/10
発売年月日:2013/6/20 初版


(あらすじ)
大日本帝国陸軍内にスパイ要請組織”D機関”を作り上げ、異能の精鋭たちを統べる元締め、結城中佐。その正体を暴こうとする男が現れた。英国タイムズ紙極東特派員アーロン・プライス。結城の隠された生い立ちに迫るが……(「追跡」)。ハワイ沖の豪華客船を舞台にした初の中編「暗号名ケルベロス」を含む全5編。世界各国、シリーズ最大のスケールで展開する、究極の頭脳戦!「ジョーカー・ゲーム」シリーズ、待望の第3弾。

(感想)
ジョーカー・ゲーム」「ダブル・ジョーカー」に続くシリーズ3作目。最初のうちは、「こいつらすげー!」で面白くて読んでいたが、それだけで引っ張っていくだけでなく一捻り二捻りしてきた。

相変わらずの緊張感のある文体で、読んでるだけで身が引き締まってくる一作。表題作のパラダイス・ロストは大きな伏線が最後に集約する気持ちよさが味わえる。しかし、やはり初の中編という「暗号名ケルベロス」がこの本では一番印象に残った。一番最後だからまだ内容を覚えているという理由が大きいかもしれないが。

前にも書いたかもしれないが、短編は短くとも奥に広がりがあるのが好きだ。その意味で、この作品はすごい。犯人のこと、ちょっと書いてあるだけなのにその裏にあるストーリーが勝手に頭の中で展開されていって、物語に深みを与える。太平洋戦争海戦直前の日本、イギリス、ドイツ、アメリカが緊張している中での、その文脈とはある意味かけ離れたところで起きる事件と、それにまつわる人たちを書いた物語。ハワイというのがまた暗示的。

1作目はまだ戦争まで時間がある感じだった。2作目で開戦が近づいてきて、この3作目も開戦直前の時期を描いている。このシリーズは、開戦を持って完結なのかな。


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