私は肉が食べたい

私は肉が食べたい。

引っ越してきてからずっとそう思ってはいたが、先日冷蔵庫が届くまでは肉を買えずにいた。少量の肉は高く付くのだ。節約ライフでハッピーな無職生活を標榜しているのに、そんなところにお金はかけられない。私は一本芯が通った男なのだ。しょうがないので、おはしカフェ・ガストでハンバーグを食べたりした。

しかし、そんな悪夢の日々は長くは続かなかった。冷蔵庫がうちにやってきたのだ。小さいながらもきちんと食べ物を冷やしてくれて、私の心をあたためてくれるすごい奴。ときどきうなってるけど、だいじょうぶだよね?

というわけで、消費税増税にも負けず業務スーパーに行ってきた。3月中よりも安くなっているものが多かった。高いなあと思ってなかなか買えなかった卵がやっと買えた。これが経済学の初歩で学ぶ需給の法則というものだろうか。

そして、買ったのは卵だけではない。肉だ、肉が我が家にやってきた!ヤァ!ヤァ!ヤァ!と書いて元ネタがわかる人はどれだけいるのだろうか。ちなみに私はビートルズはとくに好きでもない。

買ってきたのは、業務スーパーの定番中の定番のブラジル産鶏もも肉2kgだ。2kgで700円強という値段にもかかわらず、胸肉ではなくもも肉なのだ。太ももはいい。胸も嫌いじゃないけど。

これで、夢にまでみた肉が食べられる…。スーパーから家に帰る途中は文字通り夢心地であった。帰り道にあるお寺の桜があまりに綺麗だったので、自転車を止めて、眺めながらついでに買ったつぶあん&マーガリンパンを頬張っているときでさえも、思いを馳せていたのは肉だ。これはなんというのだろう、花より団子より肉、とでも言えばよいのだろうか。普通の私は、団子よりも肉よりも花、美しいものさえあれば食べ物はいらないというタイプなのだが、この時ばかりは何者かに憑かれていたとしか思えない。そんな妖怪がいるのだろうか、京極夏彦の姑獲鳥の夏 (漫画版)でも読み返してみるか。

しかし、このままでは食べることができない。凍っているからだ。まずは解凍しなければと、来たばかりの冷蔵庫にしまい込む。今夜は食べられないだろうが、明日の朝には…と思って、今日のところは肉の夢を見るだけにしておく。

そして翌朝。肉はまだ凍ったままだ。すこし表面が柔らかくなったかもしれないが、これではまだ解体ショーが開けない。俺の肉。俺のもも。いつになったらあの娘の太ももは俺のものになるんだ?

そして夜。肉はまだ凍っている。この肉はもしかして永久凍土なのかもしれない。その夜、あまりの欲望に取り憑かれていた私は、肉なしでいつもよりも品数を増やしてしまった。

精進料理みたいなのに、こんなに食って気持ち悪くなった。これもすべて肉のせいだ。無駄に時間も使いすぎた。いや、基本的にはすごく満足したのだが、やはりここにもあの娘の姿は見当たらない。

どうしてこんなに肉は融けないのだ?ブラジル産の鶏肉には塩化ナトリウムなどのケミカルでも含まれているのか?なんとなくイメージで中国産よりはいいかなと思っていたが、こんなところで裏切られるとは。

と、思い立って冷蔵庫の設定を調べてみると、最強になっていた。なんと、最強の冷蔵庫と私は戦っていたのだ…。あやうくブラジル女子の悪口をいうところだった。中古の冷蔵庫、なんて恐ろしい子…!肉が解凍できないだけでなく、私に電気代の負担まで被せてくるとは。

冷蔵庫の設定を「中」にして、一晩寝て起きた。今調べてみたら、肉はまだ若干芯がある感じだが解凍されていた。このエントリを書いたら解体ショーを開始する。主演者は私一人、観客も私一人の孤高の解体ショー。いや、ブラジルのこの女の子もいるから一人ではない。というわけで、これから2人だけの濃密な時間を過ごすので、今日はここまで。

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