読書記録:人形はなぜ殺される/高木彬光

書名:人形はなぜ殺される
著者:高木彬光
読了日:2014/4/6
東西ミステリーベスト100 28位


(あらすじ)
衆人環視の中で、施錠されたガラス箱から突如消えた”人形の首”。その直後の殺人現場には、無残な首なし死体と、消えたはずの人形の首が転がっていた。
 それは名探偵・神津恭介への挑戦状なのか…。大胆不敵にも、殺人を犯す前に必ず残酷な人形劇で殺人を予告する、その悪魔の正体は!? 復習に燃える犯人の陰惨な罠。神津恭介が奇怪な謎に挑む、本格推理の名作。

(感想)
前述の東西ミステリーベスト100の国内編で28位になっていた高木彬光「人形は殺される」を読み終わった。

結論から言うと、このトリックの1つはすでに知っていた。かなり派手なトリック。

子供の頃に読んだ、推理トリック100選みたいなのに載っていた記憶がある。本当にひどい。なんでそんな本を読んでしまったのか、私は。タイムマシンで子供の頃に戻れたら、その本を取りあげて大人の私が読むことにする。

もしかすると金田一少年の事件簿でも類似のトリックがあったかもしれない。なんとなく読んだ記憶はある。この推理トリック100選とか金田一少年とかの罪は結構あるよな。

とはいえ、この作品は上記の本に載っていたワントリックで支えられているわけではないので、その部分のトリックはわかったけれども他の部分はどうなってんだこれ?という感じで、全体の構造はわからないまま最後の大団円まで読み進められた。

それがこの作品を「東西ミステリーベスト100」入りさせた所以でもあるのだろう。トリックがわかっても面白さが減じないというところが。

(ちょっとだけネタバレ)
とはいえ、トリックから犯人が一直線でわかるんだけどね。トリックがわかった上で読むと、これでもかというくらいにおちょくりが入ってるのがわかって笑える。あと、このトリックは今は実現不可能だろう。
(ネタバレ終わり)

しかし、ストーリーの面白さ以上に引っかかったのが、文体と時代性。1955年の作品で、その時代、まだ貧しさが今の貧しさとレベルが違う感じの年代の風俗を知るのには良かった。

登場人物も、たぶんシャーロック・ホームズみたいな感じなんだろう。最初から探偵役の神津は「名探偵」として登場するのが、時代だなと感じたし、巻き込まれる方法も強引で面白い。今っぽくない。そして、2度にわたり「読者への挑戦」が差し込まれる。

端的にいうと「古めかしい」。しかし、本格推理小説は「古めかしさ」が似合う。正直に言うと、今はこういうのが読みたかった。しかし、「名探偵」と持ち上げられながら、全然名探偵じゃなかった今回の神津恭介。金田一少年もびっくりなくらい最後の最後まで悩まされてたな。

そうそう、法の目をかいくぐって資金を集め運用し、出資者に月2分(!)の分配をする「福徳経済会」なる組織があるのだけれども、そんなのは今も変わらないんだな。


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